製品マーケティングとは
スティーブ・ジョブズ氏の有名な言葉があります。「これまで以上に顧客に近付きなさい。顧客が自分で気付く前に、彼らに必要なものを伝えられるほど近くに」
では、どうすれば顧客が必要としているものがわかるでしょうか?
ここで必要となるのが、製品マーケティングです。
なぜなら、製品マーケティングの核心は、顧客を知ることにあるからです。
製品マーケティングとは、製品を市場に投入し、その流通を効果的に促進させるプロセスです。顧客はどのような人で、本当に求めているものは何かを知ることこそが、このプロセスを成功させる秘訣です。
製品マーケターは顧客のために働く人々です。その仕事は、製品の価値を明確に伝え、顧客とセールスチームの両方にその価値を理解してもらえるよう、顧客のニーズと問題点を特定し、製品のポジショニングとメッセージングを正確に行うことです。
役割としては、製品マーケティングは、製品の開発、管理、マーケティング、販売に関与します。プロセスとしては、ローンチ前、ローンチ中、そしてローンチ後のすべてに及びます。なぜなら、製品マーケティングは、製品がもたらすメリットや活用方法といった製品の特徴について、適切なオーディエンスに最初から知ってもらうことであると同時に、製品のライフサイクル全体にわたって顧客からフィードバックを収集、伝達し、製品の改善や更新が継続的に伝達、実施されるようにすることでもあるからです。
簡単に言うと、製品管理とは、ターゲット顧客を徹底的に知ることです。
優れた製品マーケターの例
製品マーケティングを適切に行うということは、顧客の気持ちを理解するということです。これを見事に行っているブランドの例はたくさんあります。
フリーミアムのメールマーケティングプラットフォームであるMailchimpを例に見てみましょう。
Mailchimpのマーケティング活動は、エンドユーザーにかけるコストの低さに焦点を当てていると思われがちです。しかし、それは間違いです。
Mailchimpは、中小企業にオールインワンのマーケティングスイートを提供し、その成長を支援しています。同社のマーケティングキャンペーンは、このメリットに真っ向から焦点を当て、顧客のニーズ、問題点、目標を中心に据えた戦略を取っています。共同設立者のベン・チェスナット氏は次のように話しています。「Mailchimpには、競合企業にはない、お客様との距離の近さがあります」その結果、1,200万人以上のロイヤルカスタマーと、メールマーケティング業界で60%のシェアを獲得しています。
もう1つの例は、ホスピタリティーの創造的破壊者であるAirbnbです。
Airbnbは、顧客が単にホテルの代わりになる安い宿泊場所を求めているのではないということを最初から理解していました。同社の製品を差別化する鍵は、「どこに滞在していても自宅にいるように感じたい」、「『居場所』が欲しい」という顧客のニーズをうまく利用することだと知っていたのです。
Airbnbは最近、この考えを象徴した、いわゆるBéloのシンボルを導入しました。CEOのブライアン・チェスキー氏は次のように話しています。「どこかでつながっているという感覚は、いつも人の心を根本的にかき立てます。この気持ちを表すため、コミュニティーとしての私たちを表すシンボルを作りました。窓、ドア、そして共有する価値観を象徴するマークです。
私たちのように、どこにいてもつながっていると感じられるシンボルです」もちろん、製品マーケティング分野の主要なプレーヤーについて話す際に、Appleについて言及しないわけにはいきません。
Appleは、優れたデザインの代名詞とも言える有名な企業です。その製品は、世界中でテクノロジーとの付き合い方に革命をもたらしたデザインの象徴となっています。
しかし、Appleの製品マーケティングを見てみると、どれほど魅力的な製品であっても、ユーザーに製品の機能を説明することにほとんど時間をかけていません。代わりに、Appleは顧客に製品の使い方を伝えています。
Appleの製品マーケティングは一貫して、ユーザーのメリットと、Apple製品が人々の仕事や余暇の時間、生活をどのように変えていくかに焦点を当てています。
MailchimpもAirbnbもAppleも、同じことを理解しています。それは、顧客へのマーケティングとは、すべての製品ストーリーの中心に顧客を据えるものであるということです。
製品マーケターの仕事の内容

製品マーケターは、企業の内部と外部に対する役割を果たします。
組織内では通常、研究者、カスタマーエクスペリエンスデザイナー、データサイエンティストと協力して、顧客が製品をどのように使用しているかを洞察します。その後、このカスタマーインテリジェンスを製品管理チームと共有し、顧客のニーズを満たすために優先順位を明確にして設定します。
顧客に対しては、製品マーケターはブランドマーケティング、コミュニケーション、セールスチームと協力して、ポジショニングやマーケティングメッセージを考え、ターゲット顧客が企業と接触するアクセスポイントやチャネル、そしてコンバージョンが発生する場所を特定します。
通常、製品マーケターの役割は8つの主要な職務に分けられます。
その職務は以下のとおりです。
- 製品のターゲットオーディエンスを特定し、購入者のペルソナを作成する。
- 製品が対応できる、購入者のペルソナの問題点を明確化する。
- 競合製品をベンチマークする。
- 説得力のある製品価値提案を作成する。
- 適切な価格設定戦略を決定する。
- 購入および顧客とやり取りを行うチャネルと方法を特定する。
- 製品の目的、機能、コアメッセージに関して、製品管理、マーケティング、セールス全体で確実に内部連携する。
- ライフサイクル全体にわたって製品が価値あるものになるよう、顧客からのフィードバックをこれらのチームに確実に届ける。
製品マーケティングと製品管理の違い
ここまで、製品マーケティングとは何かを見てきました。
では、製品マーケティングでないものとは何でしょうか?
製品マーケティングと製品管理は同じではありません。どちらの分野も、製品を成功させるために重要な役割を担っていますが、製品管理者は、製品の機能定義からワークフローの管理、サプライヤーを含む主要なステークホルダーとのコミュニケーションまで、開発プロセスを通じて製品を導く役割を担っています。
ここまで見てきたとおり、製品マーケティングは顧客に大きな重点を置いています。
製品マーケターの仕事は、顧客のニーズ、問題点、期待値を会社が理解し、開発チームがそれらのニーズを満たす製品を構築できるようにすることです。
ごく簡単に言うと、製品管理とは、新製品や新機能を定義して作成することです。
製品マーケティングとは、そうした製品や機能を素晴らしいものにするために不可欠なカスタマーインサイトを提供し、市場に投入することです。
製品マーケティングのメリット
製品マーケティングは、あらゆる企業のマーケティング戦略に欠かせない部分です。
製品マーケティングを効果的に実施することで、どのターゲットオーディエンスも製品を最大限に活用できるようになります。
製品マーケティングのメリットの概要は、以下のとおりです。
- ユーザーペルソナをより効果的にターゲットにできるよう、顧客をより深く理解する。
- ビジネスインサイトと戦略的な差別化のために、競合企業を洞察する。
- 製品管理、マーケティング、セールス間の連携を構築し、生産性を効率化・向上する。
- 市場で製品を効果的にポジショニングする。
- 売上とカスタマーロイヤルティーを高め、収益を上げる。
製品マーケティング戦略
効果的な製品マーケティング戦略では、ポジショニング、価格設定、製品のプロモーションという3つの核となる目標に取り組む必要があります。
戦略を構築する、体系的な優れたアプローチでは、以下の5つのフェーズに取り組みます。
- ターゲット顧客を特定し、ペルソナを構築する。
- ポジショニングとコアメッセージングを作成する。
- 製品の目標を定める。
- 価格を決定する。
- 社内外での製品ローンチを計画する。
顧客を特定する
何よりもまず、ターゲット顧客は誰で、ニーズは何かを理解する必要があります。購入者のペルソナを構築することで、ターゲット像をリアルなものにし、オーディエンスに合わせて戦略をカスタマイズすることができます。
製品を適切にポジショニングする
ペルソナを構築し、顧客のニーズを正確に把握したら、ポジショニングやメッセージングで顧客の重要な問題点にどう答えるかを考える必要があります。顧客中心の視点で考えるよう、注意してください。つまり、貴社の製品は何が違い、何がユニークなのかだけでなく、その機能がターゲットオーディエンスにどう役立つのか、その製品から得られるメリット、競合企業ではなく貴社や貴社の製品を選ぶべき理由などを考える必要がある、ということです。ポジショニングを具体化するエレベーターピッチを作成したり、ブランドとの一貫性を保ちながら、顧客の共感を呼ぶスタイルや話し方のガイドを作成したりすることをお勧めします。
設定すべき製品目標
目指すのは収益を上げること、カスタマーエンゲージメントを向上させること、それともブランドエクイティを高めることでしょうか?選択する目標は、マーケティングする製品の種類や貴社の戦略的目標によって大きく異なります。しかし、目標を設定することで、取り組みに目的と明確さがもたらされるだけでなく、成功を測定するメカニズムも明確になります。
製品の価格設定戦略とは
製品マーケティングは、価格設定戦略において重要な役割を果たします。製品マーケターは、重要な意思決定に役立つカスタマーインサイトや競合企業情報インテリジェンスを持っています。その中で、競合企業が販売する製品と類似しているかどうか、非常にニッチな製品かユニークな製品かどうかによって、競争力のある製品価格設定を選択するか、価値に応じた製品価格設定を選択するかを決めます。
ローンチの準備をする
市場に投入する前に、新製品を社内でローンチする必要があります。ここでは、製品に関するすべての重要情報(目標、機能、ポジショニング、メッセージング、価格設定、顧客へのローンチ方法など)を共有する必要があります。社内で認識を共有できたら、既存の顧客、潜在顧客、ターゲットオーディエンスに向けたローンチについて考えます。このパズルの鍵となるのは、ポジショニング、タイミング、チャネル、そしてこれらの要素をどのようにマッピングしてひとつにするかです。
目標に応じて、ウェブサイト、ソーシャルメディア、店舗、イベントやキャンペーンなど、どこにマーケティング活動を集中させるかを考える必要があります。
製品マーケティングのためのツール

市場には、製品マーケティング戦略を実施するための多種多様なツールがあります。
ON24では、最先端の製品デモサービスを提供しています。テレビのような魅力的なデモ体験、カメラに写るタレント、ビデオクリップ、画面共有を統合できます。
プロジェクト管理ツールや時間管理ツールの中で最もよく使われているのが、Trello のような「ホワイトボード」で、チームの調整、共同作業、優先順位付けを支援します。
また、Product Boardのようなロードマップツールは、必要なものをすべて1ヶ所にまとめるのに適しています。
カスタマーインテリジェンスの観点から見ると、Typeform は、高いユーザビリティーとすぐにカスタマイズできるテンプレートが好評で、製品マネージャーの間で人気を集めています。User Testing も、マーケティングコンセプトやプロトタイプのテストに適しています。
カスタマーエンゲージメントには、利用できる数々のコミュニケーションツールやライブチャットツールを検討してみてはどうでしょう。こうしたツールには、Zendesk、Freshworks、LiveChat などがあります。これらは、貴重なフィードバックを提供しながら、顧客と製品を結び付けることができる、素晴らしい手段です。
MailChimp や Hotjar など、ターゲットオーディエンスへのリーチや、トラフィックの監視に役立つメールツールや分析ツールも豊富にあります。
最後に、CRMツールは、顧客データを1ヶ所にまとめることで、情報の流れを維持するのに役立ちます。HubSpot CRM をチェックしてみてください。ユーザーはセールスデータ、メール、通話を簡単に記録できます。
製品マーケティングと従来のマーケティング
ここまで、製品マーケティングの主な役割、責任、メリットの多くを取り上げてきました。
ですが、結局のところ、製品マーケティングは従来のマーケティングと本質的に同じものではないかと感じているかもしれません。
一言で言えば、両者は「違うもの」です。
従来のマーケティングとは、企業やブランドを全体的にプロモーションすることです。リードジェネレーション、SEO、新規潜在顧客の獲得とコンバージョンなど、企業のコンテンツの一部を形成する、あらゆるものを網羅しています。そして、ブランドのすべてのマーケティングメッセージに一貫性を持たせています。
これまで見てきたとおり、製品マーケティングとは、特定の製品のオーディエンスベースを理解し、そのオーディエンスのニーズに合わせて製品のポジショニングやメッセージングを調整することです。
製品マーケティングでは、特定の製品のローンチやマーケティング戦略に関連するあらゆることと、ローンチや戦略の先にあるすべてものを対象としています。製品マーケターは、市場開拓戦略のあらゆる側面の管理者であり、実行者です。